小説を書くときに使われる表現技法の一つに擬音語(オノマトペ)があります。
「ザワザワ」「ふわふわ」など、効果音や状態を描写するときに使われるもののことをいいます。
擬音をうまく使うと、読者がイメージしやすくなったり臨場感が出る効果があります。しかし使い方を間違えると幼稚な印象を与えてしまうこともあります。
この記事ではオノマトペの効果的な使い方やメリット・デメリットを解説します。
小説の擬音(オノマトペ)の書き方!効果的な使い方や注意点
まずはオノマトペとは何か基本的な意味や使い方、効果的に使われている文学作品を解説します。
- 擬音とオノマトペの違い
- 効果的な使い方
- 文学作品の例
擬音とオノマトペの違い
そもそも擬音とオノマトペは同じ意味なのでしょうか?
オノマトペには主に4つの種類に分類されます。
- 擬音語:実際の音を真似(ガタガタ、ドンドン)
- 擬声語:生物の声を表現(ワンワン、ニャーニャー)
- 擬態語:様子や状態を表現(すらすら、いらいら)
- 擬情語:心理状態を表現(わくわく、どきどき)
つまり擬音語はオノマトペというカテゴリーに含まれる一種ということになります。
4つに分類するとわかりにくいですが「音を表現する」「状態を表現する」の2種類という認識で問題ありません。
効果的な使い方
小説で擬音(オノマトペ)を使うと文章が読みやすくなり、状況を簡単に読者に伝えられるという効果があります。
特に以下のような場面で使うと効果的です。
- 情景を描写する
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夕暮れの公園にカラカラと乾いた落ち葉を踏む音が響く。ゆらゆらと揺れる街灯の下で彼女は立ち止まった。
- 心情を表現する
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胸の中でどきどきと高鳴る鼓動が、次第に大きくなっていく。
- 動作を強調する
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彼はがばっと布団から起き上がると、ばたばたと階段を駆け下りた。
- 五感を表現する
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ふわふわの毛布に包まれて心地よい眠りに落ちていった。
オノマトペの種類について学習したことがなくても、イメージが伝わりますよね。
丁寧に伝えようとするとどうしても長くなりがちな描写を「ふわふわ」など擬音4文字で表現できるので、文章のテンポが良くなる効果もあります。
ただし使いすぎには注意が必要です。
オノマトペを使う文学作品の例
小説で擬音語(オノマトペ)を使うと幼稚な印象を与えてしまうと解説しました。
しかし有名な文学作品でもオノマトペが使われている例はあります。
たとえば「銀河鉄道の夜」でおなじみの文豪・宮沢賢治。彼は独特のオノマトペを使うことで有名な小説家です。
- こつこつ
- ぺかぺか
- どほん
ほとんどの作品に変わった擬音が出てくるのでぜひ読んでみてください。
現代の作家では村上春樹が「くすくす笑った」という表現をよく使っています。
擬音語は効果的に使えれば、文章表現をより美しくしてくれるものです。闇雲に使わず使い所を意識するようにしましょう。
小説の擬音(オノマトペ)の書き方!メリットデメリット
小説において擬音語(オノマトペ)は効果的に使えれば文章表現をレベルアップしてくれます。
しかし使い方を間違えると逆効果になることもあるんですよね。
ここでは、メリットとデメリットを詳しく解説します。
メリット①読者がイメージしやすい
擬音やオノマトペを使うことで、読者が情景や感覚をイメージしやすくなります。
たとえば「風が強く吹いた」と書くよりも「ヒューヒューと風が吹いた」と書いた方が、音とともに実際に強い風が吹いている感覚が伝わりますよね。
日常の動作を簡潔に表現するのにも効果的です。
「トントンと階段を駆け上がる」など、オノマトペを使うことで動きがすぐにイメージできますよね。
言葉数を抑えながらも具体的に情景を伝えられるため、文章がすっきりとし、テンポよく進めることができます。
特に短編小説やテンポ重視の作品では、オノマトペの活用が読みやすさに大きく貢献します。
メリット②臨場感が出る
擬音やオノマトペを使うと描写に臨場感が出て、読者が実際に体験したような感覚を与えることができます。
たとえば「がたんと電車が揺れ、どっと乗客が前のめりになった」と書けば、突発的な音と衝撃を表現できます。
「ぱらぱらと桜の花びらが舞い落ちる中、彼女は立ち止まった」と書けば、花びらの動きが目に浮かびますよね。
このように読者の五感を刺激するようなオノマトペを使うことで、物語の臨場感を高めることができるんです。
デメリット①幼稚な印象になる
オノマトペを使うとわかりやすく読者に状況を伝えることができますが、使いすぎると幼稚な文章になってしまいます。
たとえば、幼い子供が車のことを「ぶーぶー」と表現することがありますよね。擬音語は子供にも伝わりやすいので絵本や児童書でもよく使われます。
一般小説でオノマトペを使いすぎると「描写力がない」作者だと評価されてしまう可能性があります。
特にシリアスな場面や文学的な表現が求められる作品では、乱用は避けるべきです。
実際に「サッカーのワンシーン」をオノマトペを使った文章と使わない文章で書き分けてみましょう。
オノマトペを使う描写
ぱっと抜け出したフォワードが、つるつると芝を転がるボールを追いかける。
ばしっと放たれたクロスをどんっとジャンプしたストライカーが、がつんと額で叩き付けゴールネットがばしゃっと揺れた。
使わない描写
緩やかに抜け出したフォワードが芝生を滑るようにボールを運ぶ。
放たれたクロスに向かって高く跳躍したストライカーが、額で精確に捉え、ネットを大きく揺らした。
「ばしっと放たれた」など効果音のせいでむしろ伝わりにくくなっている部分もあります。
なるべく擬音語を使わずに描写することを意識しましょう。
デメリット②違和感や不自然さ
オノマトペや擬音は使い方によっては、読者に違和感を与えることがあります。
たとえば、作品の雰囲気に合わないオノマトペを使うと、それまで感情移入して読めていても台無しになってしまいます。
シリアスなシーンで「ポカポカ」や「プンプン」といった柔らかい表現を入ると、読者は一気に現実に引き戻されてしまいますよね。
また独自のオノマトペや過剰な表現は、読者に伝わりづらいこともあります。
「ババババッと駆け抜けた」といった音は、テンポ感を出したい意図があっても具体的な情景が伝わりにくいです。
宮沢賢治のように独自の擬音を使う作家もいますが、あれは文豪だからできることです。安易にオリジナルの擬音を発明しても何も伝わりません。
自然で違和感のない表現を心がけ、読者がすっと物語に没入できるように工夫することが大切です。
小説の擬音の書き方:まとめ
小説における擬音語(オノマトペ)の書き方やメリットデメリットを解説しました。
バランスよく使うことで、擬音やオノマトペは小説の魅力を最大限に引き出してくれます。しかし書き方を間違えると幼稚な印象を与えてしまいます。
まずは擬音を使わずに描写することを意識しましょう。あくまで「効果的なスパイス」として取り入れることが、上手な使い方のコツです。