スポーツ小説は漫画やアニメと違って、絵で伝えられないため工夫して書く必要があります。
今回はスポーツ小説を書くときに重要なポイントを5つ解説します。
競技ごとの特徴を活かしてストーリー展開や描写をすることで読者に共感してもらえるリアリティのある作品を作ることができます。
後半では特に人気がある競技「サッカー」「バスケ」「野球」小説の書き方に特化して解説しているので参考になれば幸いです。
スポーツ小説の書き方5つのコツ
スポーツ小説を書くとき押さえておくと良い基本的なポイントを解説します。
- 心理や内面描写を重視する
- 経験したことがあるスポーツを選ぶ
- チームやライバルとの関係性を描く
- 結果よりも過程を描く
- リアルとフィクションのバランス
心理や内面描写を重視する
スポーツの魅力はなんといっても選手たちの激しいアクションや華麗なプレーですよね。
漫画やアニメなら説明しなくても絵として見せることができますが、文章で迫力や勢いを伝えることはかなり難しいです。
そのため、文章だからこそ伝えやすい切り口に変えるほうがいいかもしれません。
たとえばプレー中の「心理描写」や「相手との駆け引き」など選手の内面は小説だからこそ深掘りして詳しく書ける要素です。
試合の緊張やプレッシャー、勝利の喜びや敗北の悔しさなど、さまざまな感情を描くことで読者は登場人物に感情移入しやすくなります。
試合中の描写も選手の葛藤をリアルに描くと緊張感を感じられて没頭できる作品になります。
例文
額から流れ落ちる汗を腕で拭いながら、山田は唇を噛み締めた。相手チームの鉄壁の守備陣を前に、彼本来の鋭いドリブルは影を潜めていた。
何度か仕掛けようとしたが、ことごとく厚い壁に阻まれる。焦燥感が山田の胸を締め付ける。
また肉体的な変化や感覚的な表現を交えると状況が伝わりやすくなります。
経験したことがあるスポーツを選ぶ
スポーツ小説を書くときは、自分が経験したことがあるスポーツをテーマにするのがおすすめです。
なぜなら選手の心理やゲームに対する知識は経験しないとわからないものだからです。
サッカー小説を書く場合、ネットや本で調べた知識だけで書いてもサッカー経験者が読んだ時にガッカリするでしょう。
「こんなことは考えない」「全然リアルじゃない」と薄っぺらい知識で書かれたことがバレてしまいます。
自分が経験したことがあるスポーツなら、実際にプレーしたときの感覚や試合での緊張感を思い出しながら書くと、説得力のある小説になります。
- 練習の苦しさや達成感を描く
- 試合前の緊張やプレッシャーをリアルに表現する
- 試合中の駆け引きや戦術を細かく描写する
- スランプ時の心理状態をリアルに書く
スポーツ経験者だからこそわかる描写があると良いでしょう。
チームやライバルとの関係性を描く
スポーツ小説では、試合の勝ち負けだけでなくチームメイトやライバルとの関係性も重要な要素になります。
- エースの座を巡るライバル関係
- 戦術の違いによる対立
- 新メンバーとの確執
- 試合では激しく競い合うが、お互いを認め合っている
チームメイトは仲間でありながら、レギュラー争いをするライバルでもあります。それが絆や嫉妬心を生み人間ドラマにつながるのです。
チーム内での葛藤や思いを丁寧に描くことで感情移入しやすい小説になります。
また、ライバルキャラは単なる「嫌なやつ」ではなく強さや努力を感じさせるライバルにすることで、主人公との対決がより印象的になります。
スポーツ小説の面白さは「技術的な成長」でなく「心の成長」にあります。
仲間やライバルとの関係を通じて成長している姿を見せるようにしましょう。
結果よりも過程を描く
スポーツ小説を書くときは試合結果よりも過程のほうが重要なんです。
スポーツ小説で試合の勝敗以上に重要なのは、キャラクターの成長過程と努力の描写です。
読者の心を揺さぶるのは勝利や敗北という結果ではなく、そこに至るまでの登場人物たちの苦悩、葛藤そして成長の軌跡なんです。
読者の心に残るのは目標に向かって努力する登場人物たちの姿。その過程で描かれる人間ドラマこそが、スポーツ小説の醍醐味です。
- 朝練で黙々とシュート練習する主人公
- チームメイトとぶつかり合いながらも、お互いを高め合っていく様子
- 苦手な練習メニューに向き合い、克服していく様子
スポーツ小説とは「スポーツを通じて成長する人間を描くもの」だと思います。
リアルとフィクションのバランス
スポーツ小説では、リアルな要素とフィクションのバランスが大切です。
あまりにもリアルすぎると地味になってしまいますが、非現実的な必殺技ばかりだと読者が共感できなくなります。
人間ドラマとして描く場合は、必殺技や二つ名などは作らなくていいでしょう。しかしエンタメとして描くなら盛り上がる要素を入れるのもアリです。
- 基本的なルールや戦術はリアルにする
- キャラクターの成長や試合展開にドラマ性を持たせる
- 読者が「ありえないけど、もしかしたらできるかも?」と思える設定にする
スポーツ漫画やアニメでは、キャラクターに「二つ名」や「必殺技」があることが多いです。
- 二つ名の例
-
- 雷速のストライカー
- 無敗のエース
- 氷の司令塔
- 必殺技の例
-
- ライジングキャノン
- 影踏みドリブル
- 無音サーブ
小説でもこれらを活用すると、登場人物の個性が際立ち読者の記憶に残りやすくなります。
ただし、現実離れしすぎるとスポーツ小説としてのリアリティが薄れるので、「本当にありそうな必殺技」にするとバランスが取れます。
学生が主人公の場合は、以下の記事で解説している青春小説の基本も押さえておきましょう。

スポーツ小説の書き方!サッカー・野球・バスケを書くポイント
スポーツ小説を書くときは、競技ごとの特徴をしっかり理解することが大切です。
競技によって、それぞれ試合の流れや選手の動きが大きく違います。
ここでは、特に人気のあるサッカー・バスケットボール・野球の小説を書くときのポイントについて詳しく解説します。
サッカー小説の書き方
サッカーは、チームプレーと個人技の両方が重要なスポーツです。
試合中はボールが常に動いているためスピーディーな展開が求められます。そのため、試合シーンではテンポの良い文章を意識すると臨場感が出ます。
「動き、状況、次のアクション」という流れを意識してスピード感を重視すると、読者も臨場感を持って読めるようになります。
- 個人技とチームプレーのバランスを描く
- 試合のスピード感を意識する
- ポジションごとの役割を活かす
- 主人公の成長とチームの変化をリンクさせる
バスケ小説の書き方
バスケットボールは、点数が入るテンポが非常に速く他のスポーツに比べてシーソーゲームになりやすい特徴があります。
残り数秒で得点が入ることも多く、ギリギリまで勝敗がわからない点がドラマチックな展開を生み出します。
また、5人という少ないメンバーで戦うためそれぞれのキャラクターの個性が試合の流れを大きく左右します。
- 試合の攻防を細かく描く
- キャラクターの能力を活かした戦術を考える
- 逆転劇やブザービーターなど試合の終盤のドラマ
- 瞬間的なプレーの連続
野球小説の書き方
野球は他のスポーツに比べて試合が長く、一球ごとに間があるので「緩急をつけた描写」が必要になります。
打席に1人ずつ立っていくのでそれぞれのキャラクターに焦点を当てやすく、投手との心理的な駆け引きが描きやすいです。
また、時間切れで試合が終わらないのもポイントです。9回裏2アウトで10点差あっても逆転できる面白さがあります。
甲子園などの影響もありスポーツの中でも国民的な浸透度が高いので、野球小説は書きやすくドラマも作りやすいと思います。
- 試合の流れにメリハリをつける
- ピッチャーとバッターの心理戦
- 1人ずつ焦点が当たる
- 時間制限がない面白さ
- 「エース対4番」「代打の活躍」などドラマを作る
スポーツ小説の書き方:まとめ
スポーツ小説の書き方を解説しました。
- プレーよりも内面描写を重視する
- 経験したことがあるスポーツを選ぶ
- チームやライバルとの関係性を描く
- 試合結果よりも成長過程が大切
- リアルとフィクションのバランスを意識する
スポーツ小説を書くうえで大切なこと、競技のリアルな魅力を伝えながら選手たちの成長や人間ドラマを描くことです。
試合の臨場感や選手の心理描写にこだわることで、読者にとって感動的で熱い作品を生み出すことができます。
サッカーやバスケ、野球などそれぞれの競技の特徴を活かしてストーリー展開を作ることで、魅力的な小説になりますよ。