純文学とはストーリーの面白さよりも「文章の美しさ」や「テーマの深み」など芸術性が重視される小説のジャンルです。
今回は「純文学を書いてみたいけれど、どうやって書けばいいのかわからない…」という方に向けて純文学の書き方をお伝えします。
テーマの選び方、文体など文章表現のポイントを詳しく解説していきます。
純文学とは何か?大衆小説との違い
純文学には明確なストーリーの面白さよりも、美しい文章やテーマ性が重視されます。
まずは純文学とは何か、基本的なポイントを解説します。
- 純文学とは何か?
- 純文学と大衆小説の違い
純文学とは何か?
純文学とは、物語の面白さよりも「文章表現の美しさ」や「テーマの深さ」など芸術性が重視されるジャンルです。
純文学という言葉を聞くと、少し身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。

私自身、小説を書き始めた頃は「純文学は難しくて近寄りがたい」と感じていました。
しかし、実際に取り組んでみると純文学は人間の心の機微や生きることの本質を探求するとても魅力的な創作活動だと気づきました。
純文学は単なる娯楽や読み物としての価値を超えて、人間や社会の本質に迫ろうとする文学です。
作家の深い洞察力と表現力が求められ、読者の心に深く響く作品を生み出すことができます。
これは決して特別な才能がなければできないというものではありません。誠実に観察し思考を重ね、丁寧に言葉を紡いでいけば、誰にでも純文学は書けるのです。
純文学と大衆小説の違い
純文学と大衆文学の違いについて、よく「難しいか易しいか」という基準で語られることがありますが、これは本質的な違いではないと私は考えています。
最も大きな違いは、その作品が何を目指しているかにあります。
- 大衆小説は読者を楽しませるもの
- 純文学は読者に考えさせるもの
大衆小説は読者を楽しませることを第一の目的として、エンターテインメント性を重視します。
明確なストーリーがあってクライマックスの盛り上がりなど楽しめるような工夫がされています。
一方の純文学は、社会や人間などテーマを深く掘り下げて描くメッセージ性があります。
人間の内面や社会の深層に切り込むことを目指し、ときには不快感や違和感すら意図的に描くこともあります。
そのため読者は物語を楽しむだけではなく、物語を通じて何かを考えさせられるということになります。



ただ、文学界的に明確な基準というものはなく、連載される文芸誌によって形式的に分けられているくらいの感覚です。
純文学を書くときは「どんなテーマをどう表現するか」が問われます。そして「どんなストーリーに乗せれば伝わるか」が重要です。
純文学のストーリーはテーマを表現するためのレールのようなものなんです。
では、純文学のテーマとはどんなものを扱うのか次の見出しで解説していきます。
純文学小説の書き方│テーマやストーリー
純文学ではどんなテーマを描くのかが重要なポイントになります。
何をどう描けばいいのか、純文学のテーマやストーリーについて解説します。
- 普遍的なテーマを描く
- 時代性を加える
- ストーリーは過程に焦点を当てる
普遍的なテーマを描く
純文学では「普遍的なテーマ」を扱うことが多いです。
たとえば、「愛と喪失」「孤独」「人間の本質」など、時代が変わっても多くの人に共感されるテーマが好まれます。
太宰治の『人間失格』は1948年に初版が発行された小説ですが、現代でも多くの人に共感されていますよね。
人間失格のテーマはいろんな解釈があると思いますが、「人間の弱さ」や「自己と社会」などいつの時代でも変わらない普遍的なものを扱っています。
普遍的なテーマとは何か、具体的には3つのパターンに分けられると思います。
- 人間の本質に関する(孤独や愛)
- 社会の矛盾を扱う(現代社会)
- 新しい価値観や視点を問う(人生の意味や存在意義)
自分が普段から感じている社会や人間への疑問をテーマにすると書きやすいかもしれません。作家自身の視点や経験が加わることで、より深みのある作品になりますよ。
時代性を加える
普遍的なテーマだとすでに多くの名作が生まれているため、今更自分が書く必要がない、書けるものがないと思ってしまうかもしれません。
しかし、現代を生きる私たちだから書ける時代性を加えれば新しい純文学はいくらでも書けるんです。



たとえば「SNS時代の孤独」は太宰治には書けないテーマですよね。
人間の孤独という普遍的なテーマを扱いながらも現代ならではの時代性を加えています。
テーマに時代性を加えるには、新聞やニュースを日々チェックするだけでなく、その出来事が人々の生活や心情にどのような影響を与えているかを観察するようにします。
たとえば、スマートフォンの普及は単なる技術の進歩ではなく人々のコミュニケーションの形や人間関係の質を大きく変えました。
このような時代の変化を小説の中で自然に描き込んでいくことで、より説得力のある物語が生まれますよ。
ストーリーは過程に焦点を当てる
前述したように純文学のストーリーはテーマを表現するためのレールのようなものです。
重要なことは物語のクライマックスや結末よりも「過程」に焦点を当てること。
純文学のプロットを考えるときは、次のポイントを意識すると良いです。
- 物語の「結末」ではなく、「過程」に焦点を当てる
- 登場人物の心理描写を細かく掘り下げる
- 風景や状況描写に情緒を込める
純文学では、物語の起承転結よりも「テーマの深さ」や「人間の内面描写」が求められます。
ストーリーを作るというよりも「何を描きたいのか」に集中することが大切です。
純文学小説の書き方│美しい文章や文体
純文学では文章そのものが作品の魅力になります。
比喩やリズムを意識し洗練された言葉を選ぶことで、読者の心に響く文章を書けるようになりますよ。
ここでは、純文学の美しい文章や文体について解説していきます。
- 美しい文章とは?
- 文体を確立する
- 内面や感情を丁寧に描写する
- 比喩や象徴を使った表現
美しい文章とは?
「純文学の美しい文章」と聞くと、難しい言葉を使ったりこねくり回したり表現をするイメージがありますよね。
しかし美しい文章とはそういうことではありません。大切なのは大切なのは、読者の心に映像が浮かぶような表現を心がけることです。
たとえば「寒い」と書くだけでなく、「指先が徐々に感覚を失っていく冷たさ」と書けば読者はその感覚を追体験できますよね。
具体的には五感を意識して書くことです。
視覚だけでなく、音や匂い、触感、味わいまで含めると、文章がぐっと生き生きしてきます。
「雨の音が窓を叩く午後」という表現は、誰もが経験したことのある情景を思い起こさせますよね。
このように読者の記憶や感覚に訴えかける表現を意識してみてください。
文体を確立する
小説における文体は作家の個性ともいえるものなので、独自のスタイルを確立するべきです。
文体とは、文章のリズムや表現のクセ、言葉の選び方など、作家ごとの個性を表すもの。
最初は好きな小説家の文体をマネしていみるのもいいですが、慣れてきたら変えていきましょう。



「村上春樹っぽい」など誰かに似た文章、という評価しかされなくなってしまいます。
- 名作を多く読み、さまざまな文体に触れる
- 自分の言葉で書き続ける練習をする
- 自分らしい表現を探求し続ける
文体はすぐに確立できるものではありませんが、継続的な書いていくことで磨かれていきます。
内面や感情を丁寧に描写する
純文学では登場人物の内面を丁寧に描写することで、テーマを表現します。
心理描写を上手に描くには、まず身近な人や自分の心の動きを観察することです。
たとえば友達が悲しい出来事を経験したとき、その人の表情、仕草、言葉の選び方などをよく見てみましょう。
また、自分が嬉しかったときや悲しかったときの心の動きも大切な素材になります。
純文学では、単に「何が起こったか」を説明するのではなく、「それが登場人物にどんな影響を与えたのか」を描くことが重要です。
心の中で複数の感情が交錯する様子を描くと、より深みのある人物像が浮かび上がってきます。
比喩や象徴を使った表現
純文学では、単純な表現よりも「比喩」や「象徴」を活用した文章が好まれます。
たとえば「雨が降っている」と書く代わりに、
雨粒がガラスを伝い、まるで涙のように流れ落ちる。
と書くことで情緒的な雰囲気を演出できます。
また、作品全体を通して「あるモチーフ(象徴)」を繰り返し登場させるのも純文学にありがちな手法です。
村上春樹の小説では「井戸」や「猫」が象徴的に使われていますよね。
物語の中心となるイメージを決めて、それを繰り返し登場させると作品に一貫性が生まれます。
純文学の書き方:まとめ
純文学小説の書き方を解説しました。
- 純文学とは面白さよりもテーマの深さを重視する小説
- 普遍的なテーマを描き読者に考えさせる
- 美しい文章や文体を工夫する
純文学を書くためにはストーリーの構成だけでなく、「何をどう表現するか」を意識することが重要です。
大衆小説よりも難しく感じるかもしれませんが、自分の世界観を表現できるジャンルとしてぜひチャレンジしてみてください。
ぜひ、日々の執筆習慣を身につけながら、自分なりの純文学作品を生み出してみてください。