小説で食べ物や食事シーンを美味しそうに描写するのは難しいですよね。
登場人物が口にする一口のスープや、焼きたてのパンの香ばしさを読者に感じてもらえたら、物語の世界がぐっと広がります。
この記事では、五感を活用した美味しそうな食事描写のコツや、感情やストーリー展開と結びつけた表現方法を解説しています。

例文とともに解説しているので、あなたの物語の参考になれば幸いです。
小説の食事シーンの書き方!美味しそうな描写のコツ
小説で食事シーンを書くときは、五感をフル活用した描写を意識するのがコツです。
漫画やアニメとは違い、小説では料理や食べ物を映像として見せることができません。そのため読者に想像させる必要があります。
想像させるために重要なのが五感です。
- 聴覚(音)
- 嗅覚(香り)
- 視覚(見た目)
- 触覚(食感や触った感触)
- 味覚(味わい)
町中で飲食店に入ったときのことを想像してください。たとえばラーメン屋さん。
カウンター越しに見える厨房で聞こえるチャーハンを炒めるフライパンの音、油切りをするチャキチャキという音。
鶏ガラと醤油のスープの香りが漂ってきます。
熱々の麺をすすると、もちもちとした食感と鼻に抜ける小麦の香りなど、美味しそうな食べ物は五感に訴えてきます。
具体的にどのように食事を描くと効果的なのか解説していきます。
見た目でシズル感を表現
視覚の描写は、食べ物の見た目を直感的に伝えられる要素です。
見た目の美しさや色合いをしっかり伝えることが大切です。
たとえば「真っ赤に熟したトマトがナイフで切られ、断面から果汁がじゅわっとにじみ出る」と描写すれば、みずみずしいイメージが湧いてきますよね。
また、食べ物の質感や光の当たり方にも注目しましょう。
- バターが溶けてツヤツヤと輝くパンケーキ
- スープの表面にきらめく油の粒
「照り」「つや」「湯気」など細かいディテールを加えることで、より美味しそうに感じられます。
食べ物の広告写真では見る人の食欲をそそるみずみずしい表現を「シズル感」と言います。視覚的な魅力で食欲をそそる描写を目指しましょう。
音はオノマトペを活用する
音の表現で聴覚を刺激することも美味しそうな描写には不可欠です。
料理中の音は、まるでその場にいるかのような臨場感を生み出し料理が出来上がるまでのワクワク感を生み出します。
「フライパンの上でベーコンがパチパチと小さく跳ね、香ばしい香りがキッチンに広がる」など、音と香りをセットで描くと効果的です。
焼き立てのパンなら「パンをちぎると、パリッと小さな音を立てる」と書くと、その食感が伝わりますよね。
音の描写にはオノマトペを活用すると読者に伝わりやすくなります。「サクッ」「ジュワッ」「トロッ」など直感的にイメージしやすくなりますよ。
オノマトペの使い方については以下の記事で詳しく解説しています。


香りは記憶と結びつく
美味しそうな食事の描写には、香りを表現することも重要です。
「甘いバニラの香りがふんわり広がる」「スパイスの刺激的な香りが食欲をそそる」などの表現で読者に料理の雰囲気を感じてもらえます。
香りは感情や記憶に結びつきやすいと言われています。
そのため、香りの描写をすることで読者が自身の体験と結びつけてキャラクターに共感したり、その場の雰囲気をより深く理解してくれるようになります。
食感や温度感を伝える描写
食事シーンでは触ったときの感覚や食感、さらに温度感を描くとよりリアルに感じてもらえます。
食べ物は温度で美味しさも変わってきますよね。温かい食事は、ほっこり落ち着かせる効果もあります。
焼き立てのパンをちぎるシーンでは「ふわっとした感触とともに、まだ温かい湯気が立ち上る」と書けば、柔らかさや温度が伝わりますよね。
「ひんやり冷えたプリンが、口の中でなめらかに溶ける」といった表現を使えば、読者はその食感を想像しやすくなります。
「もちもちと弾力のあるタピオカ」など、読者が実際に口にしたときの感覚を思い浮かべられる表現を意識しましょう。
味の描写は五感で立体的に表現
食事シーンで味の描写は欠かせないものですが、味覚というのは今まで解説した4つの感覚と結びついているものです。
そのため単体で表現するよりも、香りや音、感触を描写することで立体的に味を伝えることができます。
味そのものだけでなく、食べる体験全体を五感で描写することが重要です。
たとえば「カレーライスを食べるシーン」の場合。
口に入れた瞬間、複雑なスパイスの香りが鼻腔を駆け抜ける。じんわりとした辛さの奥にフルーツの甘みとコクが広がり後を引く旨味がたまらない。一口食べるごとに食欲が刺激されていく。
味覚描写は、読者の想像力を刺激し、食欲を掻き立てる効果があります。
小説の食事シーンの書き方!感情や雰囲気を表現する
小説で美味しそうな食べ物の描写を描くときは、食事を単なる栄養補給ではなく登場人物の感情や物語の展開に関係させるとより魅力的になります。
「誰が」「どこで」「何を」「どんな気持ちで」食べるのかを意識することで、よりリアリティのあるシーンが生まれますよ。
食事で感情を表現する
食事の描写は登場人物の感情を表現する絶好のチャンスです。
たとえば、落ち込んでいる主人公が一人で食べるコンビニのおにぎりと、仲間と笑いながら囲む鍋料理では、同じ食事でも伝わる印象はまったく違いますよね。
「スプーンでカレーをすくいながら、彼女は無言で窓の外を見つめていた。食べる手は止まりがちで、味がわからないようだった」と描けば、沈んだ気持ちが伝わります。
「ピザを一口食べ、とろけるチーズの熱さに驚いて笑い合いながら、彼らは次の一切れを争うように取り合った」とすれば、楽しい感情が伝わります。
食事のシーンを通して、登場人物の気持ちを自然に伝えられるのです。
場所や雰囲気を活かす
食事シーンは、食べている場所の雰囲気も一緒に描写すると読者をその場に引き込めます。
同じお弁当でも教室で友達と一緒に食べるのと、1人で食べるのでは食事の雰囲気が全く違いますよね。
学校の昼休みなら、「机の上にお弁当を広げると、甘い卵焼きの香りがふわりと広がる。友達とふざけ合いながら、おかずを交換し合う」と描くと、学生らしい日常が感じられます。
食べる場所の雰囲気をしっかり伝えることで、読者はその場の空気感まで想像しやすくなります。
食事をストーリーに絡める
食事のシーンは、物語を進める上で重要な役割を果たすことがあります。
たとえば登場人物同士の関係性を深める場面として使うのも効果的です。
彼はそっとスープの器を差し出した。「熱いから気をつけて」彼女は驚きつつもスプーンを手に取り、小さく微笑んだ。
こんなシーンがあると、登場人物同士の距離が縮まっていく様子が伝わりますよね。
また、食事を通じて重要な伏線を張ることもできます。
主人公が訪れた小さなレストランで、「このスープの味、どこかで食べたことがある」と気づくシーンを入れることで、過去の記憶や隠された秘密につながる展開を作ることもできます。
食事をただの「食べるシーン」にするのではなく、ストーリーの鍵として活用することで、より印象的な場面にすることができます。
小説の食事シーンの書き方:まとめ
小説で食事シーンを美味しそうに描写する書き方を解説しました。
- 食事シーンは五感をフル活用して表現する
- 食べ物の美味しそうな描写は感情と結びつく
- 場所を描いてほっこりしたり沈んだ雰囲気を伝える
- ストーリーやキャラクターの関係性の変化に活用する
美味しい食べ物を文章だけで表現するのは難しいですが、五感を刺激することを意識して書いてみてください。
練習方法として、まずは自分が食事しているときにどう描写するかを考えるといいかもしれません。