小説の情景描写は、物語の世界観やその場の状況を読者に伝える大切な要素です。
しかし読者の中には「情景描写はいらない」「つまらないから読み飛ばす」という方もいるようです。
確かにくどいほど細かい描写は削るべきですが、必要な描写をなくしてしまうと小説としての奥行きが出ません。
そこで今回は、小説における情景描写の役割を考察しながら、削除すべき無駄な描写パターンを解説します。
小説の情景描写はいらない?わかりやすい文章を書く
情景描写がいらないかどうかは、ジャンルによっても変わります。
純文学は考え方が変わってくるので、今回は「ラノベ」や「エンタメ小説」において必要かどうか解説していきます。
- 細かい情景描写はいらない
- わかりやすい文章を書く
- 読者のニーズに合わせる
細かい情景描写はいらない
結論から言えば「小説の情景描写はすべていらないというわけではないが、少なくていい」ということになります。
そもそも情景描写の役割は読者がその場にいるような感覚を味わえるように状況を伝えるためにあるものです。
たとえば静かな湖を舞台にしたシーンで、湖面が太陽の光でキラキラしている様子や、鳥のさえずりが聞こえる描写があったら、その場の雰囲気を感じながら物語を楽しめますよね。

上手な情景描写は物語の世界にぐっと引き込む力があります。
そのため全く情景描写がない小説は味気ないものになり、ただ説明を箇条書きしているだけになってしまいます。
しかしあまりにも細かい描写をするとストーリー展開のテンポが悪くなり、下手に凝った描写をすると逆にどんな状況なのか、わかりにくくなります。
つまり、無駄な描写と必要な描写を見極めて執筆する必要があるということです。
わかりやすい文章を書く
細かい情景描写をすると、なんとなくカッコいい雰囲気になりますよね。
細かい情景描写の例
透き通った夏の空気が震えるほどの暑さの中、アスファルトから立ち上る蜃気楼が街並みを歪ませ、遠くの建物が溶けた飴細工のように揺らめいていた。
しかし比喩を使いすぎていて一度読んだだけでは、どんな状況なのか理解するのが難しくなります。
上記の例文は「蜃気楼が出るほど暑かった」でも伝わります。
小説は映像作品と違って読者が想像することで情景が浮かんできます。
細かい情景描写より、想像しやすいよう「わかりやすい文章」を書くことを心がけましょう。
読者のニーズに合わせる
純文学とは違い、ラノベやミステリーのようなエンタメ小説の読者は何のために小説を読んでいるのでしょうか?
簡単に言えば「楽しむため」ですよね。
- ファンタジーの冒険物を読んでワクワクしたい
- 知らない出来事を疑似体験してドキドキしたい
- 恋愛物を読んで胸キュンしたい
いろんな理由があると思いますが、一言でまとえると「娯楽として楽しむために読む」ということになるでしょう。
「難しく考えるため」に小説を読んでいるわけではありません。そのため細かい情景描写は楽しみの邪魔になってしまう可能性があります。
ラノベの読者は中高生がほとんどです。情景描写を味わいたい人は純文学や一般小説を読むでしょう。
中高生にとって情景描写は「つまらない」「無駄でうざい」と感じられてしまうかもしれません。
どんな読者にむけて小説を書いているのか、ニーズを見極めて情景描写はいらないかどうか考えるようにしましょう。
小説の情景描写はいらない?無駄な描写を見極めるポイント
小説の情景描写はいらないわけではありませんが無駄な描写は削るべきです。
では無駄な描写と必要な描写をどう見極めればいいのかポイントを解説します。
いらない無駄な描写とは以下のようなものです。
- 読者が一般的に知っている情景
- 描写しなくても想像できるもの
- 本筋に関わってこない人物や物
読者が一般的に知っている情景
読者が知っている一般的な情景なら、細かく描写しなくても理解してもらえます。
たとえば「学校の教室」といえば、多くの人がそれぞれのイメージを持っており想像できますよね。
無駄な描写の例
正面には大きな黒板がありその横には教壇と教卓が置かれている。窓際から黒板側に向かって、木製の机と椅子が6列5行で整然と並んでいた。
もし一般的な教室とは違う設定があるなら、それを描写する必要はありますが普通の教室なら細かく描写するとくどくなるだけです。
描写しなくても想像できるもの
たとえば満員電車に乗っているシーンなら「満員電車の中で押しつぶされそうになる」と書くだけで状況は伝わります。
周囲にスーツを着たサラリーマンや通学中の学生がいる情景を想像できますよね。
アニメやドラマなどの映像作品にはない小説の良さは、読者が自分なりに想像する余地があることです。



読者の想像力にゆだねていい場面は、情景描写を省略して一文で簡潔に書きましょう。
物語に関わってこない人物や物
物語に関わってこない人物や物を描写するのも無駄です。
たとえば通学途中に立ち寄るコンビニの店員を書く場合。
例文
背が高く茶色い髪を後ろで束ねた女性で、制服の襟元にはキラキラしたブローチを付けていた。彼女の名札には「山田」と書かれていた。
上記のような具体的な描写があったとします。
しかし、この店員が後の物語展開で何の役割も果たさず、再登場もしないのであればこれらの描写は完全に無駄となってしまいます。



「この人物が後で重要になるのでは?」と読者に余計な予測をさせてしまいます。
「コンビニの店員に会釈をして店を出た」程度の簡単な描写で十分です。
必要な情景描写とは?
必要な情景描写には、物語を進めたりキャラクターやテーマを深めたりする役割があります。
たとえば主人公の悲しい心情を表すときに情景描写が使えます。
例文
窓の外では冷たい雨が降り続け、灰色の空が重く垂れ込めていた。枯れ葉が風に舞い、寂しげに地面を転がっていく。
暗い天候や寂しげな自然の様子を描くことで間接的に主人公の気持ちを表現できます。
情景や風景描写は、ただの背景として使うのではなく登場人物の心情を絡めて描くことで必要なシーンにすることができます。
無駄な描写をしないために「読者に何を伝えたいのか」を意識して焦点を絞ることようにしましょう。
シーンの中で伝えたい要素だけを選び、それ以外は省略します。
小説の情景描写はいらない?まとめ
小説の情景描写はいらないのか、無駄な描写と必要な描写の見極め方を解説しました。
- 読者のニーズに合わせて細かい情景描写が必要か考える
- くどい描写を省いてわかりやすい文章にする
- 無駄な描写を省き必要な描写だけを書く
情景描写はキャラクターの心情を乗せたり、状況を読者にわかりやすく伝えるために必要な要素です。
しかし書かなくてもわかることや、想像できることは削ったほうがストーリー展開のテンポが良くなり読みやすくなります。