二人称視点とはどんな小説?書き方や効果は?例文や名作も紹介

二人称視点とはどんな小説?書き方や効果は?例文や名作も紹介

二人称視点とは、「あなた」と読者に語りかけるように書かれた小説のことをいいます。

読者がまるで物語の中に入り込んだような感覚を味わえる特徴があります。

しかし上手に書かないと逆効果になってしまうこともあります。

この記事では二人称小説の例文や名作、効果や書き方を解説しています。

この記事の内容
  • 二人称視点の小説とは?例文や名作
  • 二人称小説の書き方!視点の効果を活かすコツ
目次

二人称視点の小説とは?例文や名作

二人称視点の小説

小説の視点の中でも珍しい二人称視点というものがあります。出版されている小説でもなかなか使われることはありませんが、独特の効果があります。

二人称視点小説についてその効果や特徴をわかりやすく解説します。

二人称視点とは?

二人称視点は、小説の中で読者自身が主人公や重要な登場人物として描かれる視点のことです。

「私」でも「彼女」でもない「あなた」という言葉で語られていく物語なので、読者はまるで自分が物語の中に入り込んで行動しているような気持ちになります。

一人称視点や三人称視点など一般的なものと比べて、より直接的に読者を物語に引き込む力があります。

この視点は、特に短編やテーマ性の強い作品でよく使われ作家の個性が際立つ表現方法として使われることがあります。

例文

二人称視点の例文は以下のようなものです。

お前は静かな部屋に入る。その中には誰もいないはずだった。

あなたは窓際の席に座りコーヒーを手に取った。むせるような甘い香りが、今朝も変わらない日常を告げている。

このように読者がその状況を自分に起きているように受け止められるのが特徴です。

書き方は基本的に、一人称の「私」や三人称の「田中」などの代名詞を「あなた」などの二人称に変えるだけになります。

これだけの違いですが、読者に与える印象はかなり違うので扱いには注意が必要です。

効果は体験している感覚

二人称視点を使った小説は、読者が物語の中で実際に体験しているような感覚を味わえます。

「あなた」と地の文で語りかけられることで「自分が物語の主人公」という特別な視点から、感情移入しやすくなるのです。

さらに、自分が選択したり行動したりしている気持ちになれるので物語の展開に対してより強い感情を抱けます。

物語の結末やテーマが読者自身の経験として記憶に残りやすいのも、この視点ならではの効果です。

二人称小説の名作

二人称視点を取り入れた小説は、あまり多くありません。扱いが難しいためプロでも1作も書いたことがない小説家がほとんどでしょう。

それでも二人称視点を効果的に使っている名作はあります。

二人称小説の代表作
  • 「疾走」重松清
  • 「暗い旅」倉橋由美子
  • 「爪と目」藤野可織
  • 「容疑者の夜行列車」多和田葉子
  • 「心変わり」ミシェル・ビュトール

重松清さんの「疾走」は「おまえ」という強い二人称で書かれている物語です。

藤野可織さんの「爪と目」は芥川賞を受賞した作品としても知られています。

二人称視点の小説を書こうと思っている方は、これらの名作を参考にしてみてください。

二人称小説の書き方!視点の効果を活かすコツ

ここからは二人称小説の書き方を解説します。

前提として、実験精神や表現したいテーマは二人称じゃないと書けないという強いこだわりがない限りおすすめしません。

難易度が高いのでチャレンジとしてやってみるのはアリです。文学新人賞でも評価された作品を見たことがありません。

読者とキャラクターのつながり

二人称視点を成功させるには、物語の中で読者がどのような役割を果たすかを考えることが重要です。

たとえば、読者が主人公そのものとして描かれる場合は登場人物の背景や性格を丁寧に設定しつつそれを読者が自然に受け入れられるよう工夫します。

一方で、読者が観察者や選択者として関与する形では物語の中でキャラクターと読者のつながりを意識的に描くと良いです。

「あなた」という二人称が持つ効果で読者が物語に引き込まれるような表現を工夫できれば、面白い小説を完成されることもできるでしょう。

リアルな描写を入れる

二人称視点の特徴でもある読者の没入感をさらに高めるために、具体的でリアルな描写を取り入れるといいでしょう。

たとえば場面の風景や音、匂いなどを細かく描写することで読者が物語の世界を五感で感じられるようにします。

さらに、読者に問いかける形の文章を加えることで物語の中で選択しているような感覚を与えることができます。

あなたはこの扉を開けるべきか、それとも別の道を選ぶべきか葛藤する」といった表現で、物語へ強制的に参加させるのです。

これらの工夫を組み合わせることで二人称視点をより効果的に使うことができます。

難しい理由

この章の最初で「二人称小説で書くことはおすすめしない」と言いました。特殊な視点なのでとても難しいものだからです。

読者が登場人物と同じような感覚で描かれるため、行動や感情に共感できないと物語に入り込めません。

あなたは田中にバカと言われて激怒した。

いやいやそんなことでは激怒しないよ」と思われたらそこで読むのをやめてしまうかもしれませんよね。

二人称視点は読者を物語に入り込めやすい反面、うまく書かないと全く共感できないというデメリットもあるのです。

二人称視点の小説の書き方:まとめ

二人称視点の小説とはどんな意味か、効果や書き方を解説しました。

  • 「あなた」という視点で読者は物語のキャラにも観察者にもなる
  • 読者を巻き込み没入感と臨場感を出す効果がある
  • 読者が共感しやすい感情や行動を描くことで違和感を減らせる

二人称小説で芥川賞を受賞した名作もありますが、基本的にはおすすめできない視点です。

難易度が高いですが、挑戦として短編で書いてみるのがいいかもしれませんね。

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この記事を書いた人

「物書きラボ」は、小説の書き方を初心者にもわかりやすく解説するサイトです。既存のノウハウだけではなく私が実践し試行錯誤を重ねた情報をお届けしています。

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