今回は小説の構成方法の一つ、「三幕構成」についてわかりやすく解説します。
物語を「導入」「対立」「解決」3つのパートに分けて進めるシンプルでわかりやすいストーリーの作り方で、ハリウッド映画でも使われています。
シンプルとはいえ面白い小説を作り上げるにはミッドポイントなど重要な部分をしっかり設定する必要があります。
この記事では三幕構成の基本や書き方を具体例を交えながら解説します。
- 三幕構成とは?基本的な構成やメリット
- 三幕それぞれの書き方!ミッドポイントや具体例
- 起承転結や序破急との違いは?
三幕構成とは?小説の構成をシンプルに理解しよう
三幕構成は、物語を「導入」「対立」「解決」の3つの部分に分けて進めるお話の作り方です。
映画や小説でよく使われていて、見る人や読む人がストーリーをわかりやすく感じられるような構成方法です。
特にハリウッドでは脚本家シド・フィールドによるメソッドとして有名なんです。
まずは三幕構成の流れを簡単にまとめていきます。
三幕構成の基本的な流れ
三幕構成の3つのステップは以下のような流れになっています。
第一幕
まず第一幕の「導入」では、主人公や登場人物がどんな人か、どんな世界で話が進むのかがわかるように紹介されます。
ここで物語のきっかけとなる出来事が起こり、主人公がその問題に向き合う決意をする場面が描かれます。
第二幕
次に第二幕の「対立」では、主人公が目標に向かう中で、さまざまなトラブルや試練に立ち向かいます。
この部分で物語が盛り上がり、主人公の成長や変化が見えてくるのがポイントです。
第三幕
最後の第三幕「解決」では、主人公が大きな課題を乗り越え物語がクライマックス(最高潮)に達します。
ここでストーリーがまとめられ、見ている人や読んでいる人にとって納得できる結末を迎えます。
このように三幕構成を使うと、物語にわかりやすいリズムが生まれるので、見ている人や読んでいる人もどんな展開が来るのかワクワクしながら楽しめるんですよ。
三幕構成のメリット
三幕構成が多くの小説や映画に使われているのは、シンプルでわかりやすく物語が展開しやすいからです。
「導入」「対立」「解決」という流れで構成されるため、作者が登場人物を自然に成長させることができて、読者や観客もその変化を理解しやすくなります。
また、三幕構成にはそれぞれ「きっかけ」「対立」「解決」といった、物語を盛り上げるための要素がしっかり含まれているのもポイントです。
この流れを使うと最初から最後までドキドキしながら楽しめるストーリーが作れるので、映画や小説の中でとても人気があるんですよ。
さらに、三幕構成は古代ギリシャの劇の時代から続いているとも言われていて、長い歴史の中で多くの名作がこの流れを使ってきたんです。
そのため、今でもプロから初心者まで、たくさんの人に愛用されています。
三幕構成を使った小説の書き方!ミッドポイントや具体例
三幕構成の流れは、大きく3つの部分に分かれています。どの段階でも物語がわかりやすく進むようになっているので、それぞれどんなことが起こるのか見てみましょう。
第一幕「導入」の書き方
第一幕の導入では、まず物語の舞台や登場人物が紹介されます。主人公はどんな生活をしていて、どんな性格なのかが少しずつわかってきます。
そして、物語を動かす「きっかけ」となる出来事が起こり主人公が新しい挑戦をする決意を固めるところがポイントです。
物語のはじまりである第一幕は、登場人物や物語の舞台がきちんとわかるように描くことが大事です。
ここで主人公がどんな人で、どんな目標を持っているのかをしっかりと伝え、読者が「このキャラクターの行く先を見てみたい!」と共感できるようにしましょう。
物語のきっかけとなる事件や問題も、できるだけはっきりと描くことがポイントです。
主人公がその出来事にどう関わるのか、どんな気持ちで動き出すのかがしっかり伝わると、読者は自然に物語に引き込まれていきます。
第二幕「対立」の書き方
第二幕の対立では、主人公は自分の目標に向かって進み始めますが、すぐに困難や障害にぶつかります。
友達との仲間割れやライバルとの対決など、さまざまな出来事が起こって、どんどん物語が盛り上がっていきます。
そして、物語の真ん中あたりでは中盤の転換点「ミッドポイント」と呼ばれる大きな事件が起こり、ストーリーがさらに緊張感のある展開へと進みます。
物語の真ん中の第二幕では、主人公が目標に向かう中でたくさんの試練や困難に立ち向かいます。
ここが物語の一番盛り上がる部分なので、主人公がどうやって困難に立ち向かっていくのかを面白く描きましょう。
例えば、主人公が自分の弱点に気づいてそれを克服する場面や、仲間と協力して新しい力を発見する場面があると、物語に深みが増します。
この「試練を通じて成長する」部分がしっかり描かれることで、読者や観客はキャラクターにもっと共感しやすくなるんですよ。
第三幕「解決」の書き方
第三幕の解決では、主人公が最後の大きな試練に挑みます。
物語のテーマがわかるような場面が描かれ、観客や読者にとってもスッキリとした結末を感じられる部分です。
最後の第三幕では、物語のクライマックスに向かってすべてが収束します。
主人公がこれまでの成長を活かして一番大きな試練に挑み、物語のテーマがはっきり伝わるシーンが作れると良いですね。
クライマックスでの緊張感を高めるためには、第一幕と第二幕で張った伏線をここでしっかり回収し、問題がすべて解決するようにしましょう。
結末は、主人公が試練を乗り越えて成長した姿を見せると、読者も「良い物語だったな」と感じることができ、物語全体にまとまりが出ますよ。
三幕構成の書き方!ミッドポイントや具体例
- ミッドポイントが軸になる
- ロミオとジュリエットの例
- 注意点とよくある失敗例
ミッドポイントが軸になる
三幕構成の中で重要なポイントになるのが「ミッドポイント」です。
ミッドポイントは第二幕の中間、つまり物語の真ん中に位置する場面で起きる大きな転換点のことをいいます。
それまでのストーリーを大きく変える出来事であり、主人公の目標や動機が改めて設定されることが多いため物語の方向性が変わります。
簡単に言えば主人公が解決に向けて動き出す事件が起きます。
例えば、敵の真の目的が明らかになったり、主人公の過去が明かされたりすることがあります。
読者の感情が盛り上がる前半のクライマックスともいえる場面です。
具体的な例として、童話『シンデレラ』のミッドポイントは以下の通りです。
シンデレラのミッドポイント
シンデレラが舞踏会に参加し、王子と出会う瞬間。この出会いが、彼女の人生を変える重要な出来事となり、物語のクライマックスへとつながります。
ロミオとジュリエットの例
シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』を例に三幕構成を書き出してみましょう。
ロミオとジュリエットが出会って恋に落ちる場面が描かれ、物語の中心となる恋愛関係がはっきりします。
二人の恋愛が進む一方で、家族間の対立も激しくなり、物語に緊張感が加わります。
二人の恋の結末が描かれ、感動とともに物語が終わります。
物語をざっくり分けるとこのようになりますが、もちろんそれぞれのパートの中で複雑な展開が行われていきます。
注意点とよくある失敗例
三幕構成で小説を作るときは、キャラクターやテーマの魅力をしっかり伝えるために工夫が必要です。
三幕構成を上手く使うには次のポイントに注意することが大切です。
よくあるミスを知っておくと、失敗しにくくなりますよ!
テンポが速すぎたり遅すぎる
ストーリーの進み方が速すぎると、読者がキャラクターや設定についていけなくなります。また、逆に遅すぎると途中で飽きてしまうこともあります。
各幕のテンポを意識して、物語全体にリズムを持たせましょう。
主人公の動機がはっきりしていない
主人公がなぜその行動をするのかがわからないと、読者が登場人物に共感できず物語に入り込みにくくなります。
特に第一幕では、主人公がどうしてその冒険に飛び込むのか、はっきりと描くことが重要です。
クライマックスがあっさりしすぎる
第二幕で盛り上げたのに、第三幕のクライマックスが短いと、期待していた結末が物足りなく感じてしまいます。
クライマックスには十分な緊張感を持たせ、物語のテーマがしっかり伝わるようにしましょう。
第二幕での成長が足りない
試練や課題が単調だと、キャラクターの成長や変化が伝わりにくくなります。
いろいろな課題や試練を工夫して取り入れ、主人公がしっかり成長していることを描きましょう。
このように、三幕構成のコツや注意点を押さえておけば、読者や観客が最後まで楽しめる物語が作れます。ぜひ参考にしてみてくださいね!
三幕構成と起承転結・序破急の違い
小説の物語の構成方法には、今回解説する三幕構成のほかに起承転結や序破急といったものがあります。
- 三幕構成
- 起承転結
- 序破急
三幕構成は、ほかの物語の構成と比べてシンプルでわかりやすいのが特徴です。
序破急との違い
「序破急(じょはきゅう)」は、物語や舞台の構成方法のひとつで、特に日本の伝統芸能でよく使われています。
三幕構成と序破急の構成に違いはないので、同義語として考えても問題ありません。
序破急も三幕で構成されており、「序」でゆっくり始まり、「破」でミッドポイントのような事件が起こり「急」で終わります。
『エヴァンゲリオン』で使われたこともありますが、歌舞伎などの伝統芸能で使われる場合には序破急と呼ぶ、くらいの認識で大丈夫です。
起承転結との違い
三幕構成と起承転結はよく似ていますが、展開のスピードや段階の数が異なります。
起承転結は4つの段階で、物語を順を追って展開するのに対し、三幕構成は3つの段階で話を進めます。
起承転結では「転」で一気に物語が転換しますが、三幕構成では第二幕の中で一度ミッドポイントがあり、第三幕クライマックスが訪れます。
つまり三幕構成のほうは小さなクライマックスと大きなクライマックスが二度起こると言えます。
ただ、三幕構成も物語の中心にあるミッドポイントを軸にして第二幕を前半と後半に分けられるので実質4つのパートになります。
違いについて明確に分ける必要はなく、自分が小説の構成をしていて書きやすい方を採用するのが良いと思います。
起承転結についてはコチラで解説しています。
まとめ
小説や映画で使われる構成方法の一つ「三幕構成」とはなにか具体例や書き方を解説しました。
- 物語を「導入」「対立」「解決」の3つに分ける構成法
- シンプルで物語がわかりやすくなるメリットがある
- 中間にあるミッドポイントが重要
- 序破急との違いはない
- 起承転結に比べると転換点が多い
三幕構成はストーリー展開をわかりやすくしてくれる小説作法の一つです。
構成を3つにわけて中間地点で起きる大きな出来事、ミッドポイントを作ることができれば完成させることは難しくありません。
エンターテインメント性を保ちながら、わかりやすく豊かな物語を描くために最適な構成だと言えます。